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 相続放棄CONCEPT

ション

相続放棄 Inheritance abandonment


民法828条では相続開始の原因について、【相続は死亡によって開始する】と規定されています。
売買や贈与といった契約行為は、申込者(契約の一方当事者)と承諾者(契約ももう一方当事者)の意思の合致が必要となりますが、相続は被相続人の死亡により自動的に始まってしまう点が異なります。

相続が開始すると、被相続人(亡くなられた方)のプラスの財産(不動産や預貯金)やマイナスの財産(負債や義務)を相続人が承継することになりますが、被相続人の財産がマイナスの財産のみである場合には相続人の生活を経済的に破たんさせてしまうため、相続放棄の制度があります。

相続放棄に関して民法では次のように規定があります。この規定は重要ですので、条文をそのまま紹介します。


第938条(相続の放棄の方式)
相続の放棄をしようとする者は、その旨を
家庭裁判所に申述しなければならない。
第939条(相続の放棄の効力)
相続の放棄をした者は、その相続に関しては、
初めから相続人とならなかったものとみなす。
第940条(相続の放棄をした者による管理)
1.相続の放棄をした者は、その放棄によって相続人となった者が相続財産の管理を始めることができるまで、
自己の財産におけるのと同一の注意をもって、その財産の管理を継続しなければならない
2.第645条(※委任契約についての受任者の報告義務)、第646条(※同じく、受任者の受取物引渡義務)、650条1項(同じく、受任者の費用償還請求権)及び2項(同じく、受任者の損害賠償請求権)並びに918条2項(※家庭裁判所による相続財産の保全命令)及び3項の規定は前項の場合について準用する。

つまりは、相続は死亡により開始するが、家庭裁判所に相続放棄の申述をすることにより、死亡時に遡って相続人にならなかった効果を得るための手続きが相続放棄なのです。言い換えれば、相続放棄をしない限り、被相続人のマイナスの財産も相続人が承継することになり、返済義務も相続人に対して生じてしまいます


 ■ 相続放棄はいつまでに?

相続放棄は、【自己のために相続の開始があったことを知ったときから3カ月の熟考期間内に相続放棄しなければならない】とされています。

ここでよくある誤解は、【3カ月】の期間についてです。
民法では相続人の順位が規定されており、第一順位は被相続人の子供(または孫)、第二順位は被相続人の親(または祖父母)、第三順位は被相続人の兄弟姉妹です。被相続人の配偶者は常に相続人となります。

第一順位の相続人がいる限り第二順位の相続人に相続は開始しませんし、第二順位の相続人がいる限り第三順位の相続人に相続は開始しません。

例えば、1月1日にある家族(夫婦・子供2人)のご主人が亡くなった場合。亡くなったご主人の両親と祖父母は既に他界しており、兄弟は1名いるとします。ご主人の看取りは奥様と子供2人、兄弟とも病室で行ったので、亡くなった当日に死亡の事実を知りました。


民法では【相続は死亡により開始する】とあるので、1月1日に相続が奥様と子供2人に開始しましたので、原則として、奥様と子供2人の相続放棄申述は1月1日から3カ月内に行う必要があります。兄弟はこの時点で相続は開始していません。なぜなら、第一順位の相続人がいるため、第三順位の兄弟に相続は開始しようがないためです。

奥様と子供2人は2月28日に相続放棄の申述を家庭裁判所に行い、3月20日に受理されました。そして、4月20日の法要の際に兄弟に相続放棄をしたことを告げました。今回のケースでは第二順位の相続人は存在しませんので、第一順位相続人全員が相続放棄したことを知った4月20日に第三順位である兄弟は【自己のために相続が開始したことを知った】ことになり、そこから3か月以内に相続放棄をすればよいことになります。

大切なポイントは
【自己に相続が開始したことを知ったとき】
が基準となることです。


■ 3ヵ月を過ぎた相続放棄は受理される?

お答えとしては「受理されることもある」といえます。
司法書士事務所尼崎リーガルオフィスで扱った事案でも、そのようなケースは幾度も経験し、無事に受理されています。

相続放棄は自分に相続が開始してから3か月内に家庭裁判所に対して申述する必要がありますが、相続放棄の申述を行う前に亡くなられた方の財産を処分してしまった場合(例:不動産の名義変更や預貯金を解約して費消した等)があれば、民法上単純承認したことになりいくら3か月内であっても相続放棄はできません。

逆に、単純承認に該当する行為を行わなかったが、亡くなられた方の負債が発覚したのが自分に相続が開始したことを知った時から3か月後であった場合でも、3か月を数える基準点を「債務が発覚したとき」として申述は可能です。

そんなことあるの!?と思われる方もいらっしゃるでしょうが、これには相続放棄を行った結果の法律上の効果の違いから説明ができます。

通常の裁判所(簡易裁判所や地方裁判所)で判断された結果は判決(その他、決定・調書等)といい、家庭裁判所においては審判といいます。判決や審判は、一定の要件が満たされれば確定します。確定すると、法律上はその判決や審判で判断された内容は後から蒸し返しできないという効果が生じます。

相続放棄は家庭裁判所に対して行う手続きですが、出される結果は
受理です。審判ではありません。
受理には上記のような確定という効果がないのです。そもそも、相続放棄については一定の形式的要件の審理はしますが、受理するかどうかの審理にとどまるものですので、単純承認に当たらないような場合には3か月を経過した場合でも受理することがあります。それは、確定する効果がないので、受理された相続放棄に異議のある債権者がいれば、通常の裁判で相続放棄受理の無効を争えばいい、という考え方ができるためです。

といっても、3か月を経過して相続放棄の申述を行う場合にはそうでない場合と比べて審理は慎重にされることは当然ですので十分に内容を確認して申立を行うべきであることに間違いはありません。


■ 相続放棄の進め方

当事務所に相続放棄手続きをご依頼いただいた場合、必要な書類(被相続人・相続人の戸籍等書類、被相続人の住民票除票等)はすべて代理で取得いたします。相続放棄申述書も申述人となる方から具体的な事情を伺い、作成します(裁判所に提出前に内容を確認いただき署名をいただきます)。また、裁判所に申立てをした後の「照会書」の記載内容のアドバイスも行いますので、申述人の負担を極力軽減し安心して手続完了までお任せいただけます。

  1. 問い合わせ・予約

    行うべき手続きの概要を伺い、面談時にお持ちいただく資料等をお伝えします
  2. 面談・委任契約

    面談日程を設定し、資料等をもとに相続放棄申述書作成資料を取得します
  3. 相続放棄申述

    相続放棄申述書に署名いただき、添付書類とともに裁判所に提出します(提出も司法書士が代行いたします)
  4. 照会書の作成

    裁判所から【照会書】が申述人の住所宛に送付されます。照会書の内容は裁判所によって多少異なりますが、相続放棄を行う理由や負債内容、意思確認を行う趣旨です。照会書が届いたら、司法書士宛にFAXや郵便でお知らせいただき、記載すべき内容をお伝えします。照会書に添付すべき資料(預金通帳や債務内容のわかる書類等)があれば揃えるべき書類もご案内します
  5. 受理

    照会書を申述人から裁判所に返送いただき、他に審理上問題がなければ相続放棄受理証明書が裁判所から送付され、手続きは完了します

■ 相続放棄の費用・報酬

⇒費用・報酬のページをご覧ください

司法書士事務所尼崎リーガルオフィスでは、相続放棄申述が受理されなかった場合には実費(申述書に添付した印紙、郵券、戸籍等の書類の実費)以外は頂戴しておりません!


■ 相続放棄に関するQ&A

Q.相続放棄にはどのような書類が必要ですか?

A.亡くなられた方と相続放棄の申述人(申立てを行う方)の関係を明らかにするため、戸籍謄本等の書類が必要です。一般的な必要書類はこちらからご確認ください。これら戸籍等のほか、申述書や予納郵券等と一緒に裁判所に提出することになりますが、書類作成を依頼された場合には申述書に署名押印をいただく以外にはすべての書類を収集・作成いたします。


Q.相続放棄の手続きで裁判所に行くことはありますか?

A.基本的には書面ですべて審査していきますので、申述人の方が裁判所に行くことはありません。


Q.相続放棄が完了するまでどのくらいの時間がかかりますか?

A.個別事案の内容や受付をする裁判所の混み具合にもより変わってきますが、書類の収集(戸籍謄本等)⇒申立⇒照会書の送付と返送⇒受理通知書の受領、まで速やかにできれば1か月程度で完了すると思います。


Q.相続放棄が受理されれば何も心配することはありませんか?

A.相続放棄の効果は、「相続開始時(=被相続人が亡くなられたとき)に遡って相続人ではなかったことになる」ため、相続放棄が受理されると相続人ではなくなります。ですが、そのことは戸籍等に記載されないため、亡くなられた方に対する債権者が戸籍上の相続人に対して請求督促をしてくることがあります。その場合には、相続放棄を行った旨、相続放棄受理通知書や相続放棄受理証明書を提示あるいは交付してください。
 また、相続放棄が受理されても債権者が「相続放棄受理の無効」を争うことはできます。訴訟提起された場合には、無視せずに対応しなければ相手の言い分が認められてしまうこともありますので注意してください。




対応可能地域

<兵庫県>
尼崎市、伊丹市、西宮市、川西市、猪名川町、宝塚市、芦屋市、神戸市(全域)

<大阪府> 
大阪市(全域)、池田市、豊中市、箕面市、吹田市

上記以外の地域でも対応可能な場合がありますのでお問い合わせください。

※ 手続きの受任に際しては、事務所または依頼者の方の指定する場所で司法書士との面談が必要となります。司法書士が出張する場合で原則として往復1時間以上要する場合には交通費実費と日当が加算される場合がございます。

司法書士事務所
 尼崎リーガルオフィス


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