いきなり変なタイトルですが、少し前の新聞に出ていたニュースです。
タイトル通りですが、ある住民が近所の路上駐車に立腹し、「味噌」を車に塗り付けた事件。
結果として、「洗い流せる味噌を使っていたため器物損壊とならず」と判断され、立件されませんでした(別件で、同じ住民がスプレー塗料を路上駐車の車に吹き付けたため、これについて器物損壊で立件逮捕されました)。
車に味噌を塗られたら、「洗い流せるので問題なしです」と言われても、塗られた方は納得できないですよね。
ただ、刑法上の器物損壊罪は次のように規定されています。
刑法261条(器物損壊等)
・・・他人の物を損壊し、又は傷害した物は3年以下の懲役又は30万円以下の罰金もしくは科料に処する。
刑法の場合、大まかにいえば、その要件に該当すると罰に服することになります。罰とは、お金を払えば終わる罰金もあれば、自由を拘束される懲役、最高刑として死刑もあります。そのため、刑法に問われる行為が本当に規定する要件に該当するのか?は大変厳格に判断されることになります。
器物損壊罪にいう、「損壊」とは、物質的に物の全部、一部を害し、又は、物の本来の効用を失わしめる行為をいう と判示されており、今回の「味噌」は洗い流せるため、「損壊」に該当しないということだったのでしょう。ただ、「損壊」については、事実上もしくは感情上、器物を再び本来の目的の用に供することができない状態にさせる場合を含む という判例もあります。これは、飲食店の食器に放尿した事件についての判例です。つまりは、食器に放尿しても洗えば使えるでしょ。という理屈はダメ、普通の感覚で、そんな食器使えないでしょ、という判断がされたものです。・・・車に味噌 はその程度に達してないんですかね。
以上は刑法上のお話で、民事上の話は別の土俵で争われるので、味噌を塗られたことによる損害賠償は理論上可能です。
この新聞記事を読んで、上記のような刑法解釈とは別に思うこともあります。
その住民はもともと、路上駐車車両に 味噌をぬりたかったのか?スプレーを吹き付けたかったのか? という部分は分かりません。
まず、欲望としてそんなことは少ないと思います。
発端として、路上駐車に立腹したから、このような行為を行ったんですよね。
私の自宅近辺にも、路上駐車が絶え間ない場所があります。ここに停められると、現実として車の出入りが不能ではなくとも行いにくいのです。
私も何度も張り紙をしましたが改善されません。違う車がどんどん駐車するからです。
お金を払って駐車場を借りて正しく駐車する人もいれば、「ちょっとならいいか」と勝手な判断をして不法な路上駐車をする人。大阪市長が、「正直者がバカを見る役所はダメだ」という趣旨の発言をされていましたが、まさにそれです。路上駐車を注意する人も、逆切れされ、文句を言われることも多々あります。
そんな状況になって、味噌を塗ってしまったのかもしれません。そう思うと、同情する部分が多くあります。
路上駐車の対応については、その駐車部分が公道であれば、警察に通報をすれば対応してくれます。通報先は、110番でも、管轄の警察署の代表でもよいので、「迷惑駐車の件です」と言えば担当につなげてくれ、場所・車両情報(車種とナンバー)・駐車時間(分かる範囲で)を告げます。通報者の氏名と連絡先も聞かれますが、第三者に開示されるものではありません。また、通報者がその場にいなければならないわけではないので、違法駐車は警察に通報することを躊躇うことはありません。
ただ、駐車場所が私有地である場合には、道路交通法の適用がないので警察の取り締まりはされません(この場合も、所有権に基づく妨害排除請求権を根拠として、<停めるな><出ろ>という主張は当然可能ですが、無理やり移動したり、出れないようにすることはできません(自力救済禁止の原則))。ただ、この場合でも事実上警察に相談される方法も有効とは思います。
根本的には、個人のモラルの問題なのですけどね。