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印鑑について
なんだかんだと日常生活でもよく使う印鑑。つい忘れたときは、文房具屋(今は100円ショップにもたくさんありますね)で買ってぽんぽんと押してしまっていませんか?印鑑を押すということは法律上とても重大な意味があることです。改めて印鑑について考えてみましょう。
印鑑って何?
国語辞典によると、「1.はんこ。印。 2.あらかじめ地方自治団体や銀行その他取引先などの提出していく特定の印影。印の真偽を見分ける基礎となるもの」と書いてありました。
日常生活において、様々な場面で印鑑を使います。おそらく、自分の印鑑を一つも持っていないという人は成年している日本人にいはいないのではないでしょうか?役所での出生届け、婚姻届などの書類、登記申請の際の書類、印鑑証明書の交付申請などの公法上の手続きのみならず、私人間の売買契約、消費貸借契約などの法律行為にもとづく契約書、はたまた書留郵便や宅急便の受取など、毎日のように印鑑を使っています。
日本ではこのように印鑑を使うことが基本となっていますが、世界の中で印鑑をこのように日常的に使っている国はほとんどありません。
印鑑のルーツを辿ると、今から5000年前の古代メソポタミア(現イラク)から、中国を経て日本に到来したものです。しかし、現在では、イラクはもちろん中国でも印鑑は民間人の生活には必要とされていません。
私も前の仕事の関係で、カナダに3年ほど住んでいましたが、銀行口座の開設、役所への書類、小切手などすべてが署名です。署名する文化になれていなかったので、毎回微妙に署名が違ったり、クレジットカード(漢字で署名をしていました)と書類の署名(英語で署名をしていました)が違うことでトラブルになったことを思い出します。日本で一般国民が印鑑を使うようになったのは明治時代以降のことです。明治4年に廃藩置県を断行した明治政府が、中央集権化を推進するための一環として同年に戸籍法を制定し、戸籍の管理にあたる庄屋・年寄りに印鑑証明を行わせたことが始まりとされています。
戦後は、印鑑証明は条例によって取り扱われることになり、昭和19年に自治省の通達で、印鑑登録に関する統一的見解が自治体に出されました。
では、なぜ印鑑が必要なのでしょうか?
理由付けをするとすれば、本人の意思確認(印鑑を押すという自発的な行為をもって、その意思が真にあるとする)と本人の同一性の証明(本人の名字の印鑑はその人しか持たない、さらに印鑑登録をした実印は本人しか持っていない)といえるでしょう。
しかし、本人の同一性を確認するためのものであれば、印鑑よりも写真の貼付された運転免許証やパスポートの方が確実ですし、本人の意思確認ということであれば署名の方が偽造が困難で、他人による濫用防止もできます。
印鑑が要る!でも持ってない、というときに、その辺のお店で三文判を売っているとつい買ってしまいます。そんな100円で売っている量産された三文判に意味があるのか?と思いませんか?
ここで法律の話になりますが、そんな三文判でも意味があることになる条文が民事訴訟法228条4項に規定されています。そこには『私文書は、本人又は代理人の署名又は押印があるときは、真正に成立したものと推定する』とあります。これはとても重要な条文で、その意味は、ある私文書、たとえば100万円の借用書があって借主であるあなたの押印がされていたとすれば、法律上は<真正に成立したもの>と推定されてしまうのです。たとえ偽造されたものであってもです。
そんなもん裁判になれば真実が明らかになる!というのは残念ながら100%正しくはありません。私文書偽造の罪であれば、警察や検察が真実を調査していくことになりますが、民事上、貸主が借主であるあなたに請求をする場合、真実を明らかにする責任はあなたにあるのです。
つまりは、<真正に成立したもの>を推定されたことを、あなたの責任において真正に成立したものではないことを立証していくということです。
その借用書の日付に海外に行っていた、という場合はラッキーです。パスポートの出国記録を見ればわかりますから。現実はそうはいかず、印鑑を押せる環境にはなかったということを立証するのは困難です。ですが、借用書は真正に成立したものと推定されていますから、何らかの間接的な事実をもって(たとえば過去にもその人は書類を偽造していた等)の主張をしていくことになります。
ふに落ちない方も多いと思いますが、今もこの法律は有効に存在しています。実際に、このような事例で立証が困難で、真実ではない結果となった裁判例もありますし、法律家の中でもこの法律を悪法と言い切る方もおられます。この法律でいう<押印>とは印鑑登録された実印とは特定しておらず、100円ショップで売っている量販された三文判でもよいのですから。
私たち司法書士が不動産登記の依頼を受けた際に本人確認をするのは印鑑ではなく、写真付きの身分証明書や本人しか知らないであろう事柄を質問して本人確認をします。
・・・これでは勝手に何でもされてしまうじゃないか?と思われるでしょうが、普段心がけることとすれば、
①自分の意思で印鑑を押すときは、本当にその意思があるのかを改めて確認する
⇒ 自分自身が印鑑を押したのであればその書類は有効です。もちろん、詐欺や強迫、消費者契約法などの法律によって後からその契約を取り消すことはできますが、その文書が真正に成立したことは否定できないでしょう。
② 実印と印鑑登録カードの保管は厳重に行う
⇒ 偽造された私文書であっても、実印が濫用されて押印した場合、その文書が真正に成立したものではないということを立証するのはより厳しくなるでしょう。そもそも印鑑証明書は印鑑登録カードを持参しないと発行してもらえないことから、実印で押印するということは本人の意思や同一性がより強く推定されてしまいます。
正直なところ、三文判を使われて書類が偽造されてしまうのは困難です。そのような行為をする人、しそうな人と関わらないといった消極的な心がけ程度でしょうか。ただ、上記の①や②と比べて、偽造であることの主張や立証は行いやすいはずでしょう。
印鑑あれこれ Q&A
Q.シャチハタでの押印はダメ、と言われることがありますがなぜですか?
A. シャチハタは会社の名前で一般名詞ではありません。ですが、シャチハタといえばインク内蔵式の印鑑と誰もがわかるくらい有名です。なぜシャチハタがダメかというと、ゴムが経年劣化して、同一スタンプでも印影が変わる可能性がある他、時間が経過するとインクが薄くなること、大量生産であるため別のスタンプでも同じ形状の文字が押印できることから、シャチハタの印鑑は公文書などへの使用は認められていないことが多いのです。
ちなみにシャチハタはシヤチハタ株式会社で製造されています。ャではなくヤですが、読み方はャだそうです。以前にテレビで見たのですが、シャチハタの製造はスポンジ状の多孔質ゴムでできており、内部にインクを染み込ませることで朱肉やスタンプ台なしでの押印を可能としており、ゴム・カーボン・食塩を練りこんだ原料を型に詰めて成形し、20時間かけて煮熟することで内部の食塩を溶かして、孔を作っているそうです。試行錯誤の上、食塩を使って溶かすとは!ものすごいアイディアですね。
Q.割り印と契印はどう違うの?
A.たとえば契約書が2枚以上になる場合には、
一体の文書であることを証明するため、見開きした両面のつづり目やつなぎ目にまたがって印鑑を押すことが行われます。これを一般的に契印あるいは割り印といいます。
ですが、これは正式にいうと契印です。割り印は、ある文書と他の文書との間に関連性がある場合に、その関連性を証明するために両方の書類にまたがって印鑑を押すことであり、契印とは違った意味を持ちます。
Q.印鑑を押すときに、上下の区別がついていなくて、どっちが上か戸惑います。何か意味がありますか?
A. 印鑑には上下の区別をつけるためのくぼみやでっぱりがある場合があります。このことをアタリというそうです。仕事上で使う印鑑は、業務上頻繁に使用することも多いので、アタリが付いていることも多いですが、個人として利用する印鑑の場合にはアタリが付いていない印鑑がほとんどかと思います。
アタリが付いていない理由の一つは、印相学上、印鑑はその人の分身であり、印鑑自体に傷や余計なものをつけることはよくないという考えがあること、もう一つの理由は、契約書等に印鑑を押す際にどちらが上下かを改めて確認することで、本当に印鑑を押してもよいものか?という時間をつくるためと言われています。
Q.印鑑登録は何歳からできるの?
A.印鑑登録は必ずしもしなければならないものではありませんが、不動産の売買や遺産分割協議書の作成、公正証書の作成等の際に必ず必要となるものです。登録は住民長禄している(または外国人登録をしている)人で、年齢が満15歳以上の成年被後見人でない本人のみが登録することができます。登録する際には、印鑑登録をする印鑑と顔写真入りの身分証明書が必要です。
登録できない印鑑として、
・ 住民基本台帳に記載されている氏名、または氏名の一部の組み合わせで表されていないもの
・ 職業、資格その他氏名以外に事項を表しているもの
・ ゴム印その他材質の印鑑で変形しやすいもの
・ 印鑑の大きさが1辺長さ8ミリの正方形に収まってしまうもの、または25ミリの正方形に収まらないもの
・ 印影を鮮明に表しにくいもの、文字が判別できないもの
・ 毀損したり、通称『三文判』といわれる量産された印鑑等、登録を受けようとする印鑑として適当でないもの
といった注意事項もあります。
印鑑についてのトラブルは司法書士事務所尼崎リーガルオフィスまでお気軽にお問い合わせください
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