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支払督促
簡易裁判所で行う裁判手続きですが、いわゆる通常の裁判とは異なり、書面のみですべての手続きが終了します(相手方が異義を申し立てた場合には通常訴訟に移行します)。使い方によっては、紛争を早期に解決する方法となりえる手続きです。
支払督促って何?
支払督促とは、
・ 一定の額の金銭などの支払いを求める場合に、
・ 相手方の住所地を管轄する簡易裁判所に、申立をする手続きです。
名前こそは、「支払督促」とただの督促状?と思われがちですが、これも立派な裁判手続きのひとつです。
裁判所は最高裁判所から簡易裁判所まで、審級に分かれており、訴訟を最初に申し立てる裁判所は地方裁判所か簡易裁判所になります。それぞれの裁判所では、毎日多くの事件が申し立てられ、その事務手続きは膨大だそうです。
申立がされた裁判の中には、何度も証拠調べや尋問などを繰り返す必要のあるものもあれば、内容的にはまったく争点のない事件もあります。
そういった背景のもと、貸金・立替金・賃金などの金銭を相手方が支払わない場合に、申立人の書面による申立だけに基づいて、簡易裁判所の書記官が行ういわば略式の裁判手続きです。
支払督促のメリット・デメリット
支払督促のメリット・デメリットをまとめると次のようなものになります。
○ メリット
- 紛争の解決となっている金額にかかわりなく、金銭の支払を求める場合に利用ができる
通常の訴訟を裁判所に申し立てる場合には、原則としてその訴訟額によって管轄する裁判所が異なります。訴訟の額が140万円以下であれば簡易裁判所、140万以上であれば地方裁判所が第一審の管轄裁判所となります。地方裁判所は全国に253か所(各都道府県所在地+函館、旭川、釧路に計50の本庁とその支部の合計数)ありますが、簡易裁判所は全国に438か所あります。そのため、相手方の住所地を管轄する裁判所が狭い地域に存在していることになります。
- 書類の審査だけで発付されるので、訴訟のように申立人が審理のために裁判所に行く必要がない
通常の裁判であれば、口頭弁論期日と呼ばれる日に当事者は出頭しなければなりませんが、支払督促の場合には書面の審査だけで終わります。支払督促の申立も郵便で行えば、まったく裁判所にいくことなく手続きが終わることもあります。
※ デメリットでも説明していますが、相手方が通常訴訟への移行を申し立てた場合には裁判所にいく必要があります。
- 相手方が異議を申立なければ、証拠調べや審理を経ずに、早い段階で仮執行宣言を得て強制執行ができる
強制執行をするためには債務名義を取っている必要があります。債務名義とは、請求している内容について裁判所がお墨付きを与えたものと理解すればよいです。債務名義には、判決や調停調書など裁判所で判断されたものがあり、支払督促も債務名義となります。債務名義である判決が出て、「被告Bは原告Aに100万円を支払え」となっても、任意に支払をしない場合には強制執行の手続きをして現実の履行(支払)を強制していくことになりますが、これを強制執行手続きといいます。強制執行の目的物は、家や土地などの不動産であったり、車や芸術品などの動産、給料や預金などの債権がありますが、強制執行をするためには債務名義が必要となってくるのです。支払督促も裁判手続きのひとつですので、債務名義として強制執行が可能となります。
※ ただし、支払督促には既判力がないため、覆される可能性があることに注意が必要です。
- 裁判を申し立てる場合に比べて、裁判所に提出する印紙代が半額程度
通常の訴訟を申し立てる場合に、訴状に貼る収入印紙代が支払督促の場合には約半額となります。たとえば、100万円を返せという通常の裁判をする場合には、1万円の収入印紙+5000円程度の郵便切手が必要ですが、支払督促の申立の場合は、5500円の収入印紙+郵便切手代で済みます。
- 裁判所から書類が相手方に送付されるので、相手方に心理的プレッシャーを与え、請求に応じる可能性がある
相手方にこちらの主張をする場合、メールや電話、郵便など様々な手段があります。そういったいわば<通常の>請求方法では、のらりくらりと応じなかった相手でも、裁判所から書類が届くことでこちらが本気で請求をしていると感じ、また、強制執行されることを嫌がり、請求に応じることもよくあります。結果として、速やかな問題解決に至ることが期待できます。
× デメリット
- 金銭の支払請求などにしか使えない
たとえば、家賃を滞納している入居者に対して、滞納家賃を支払督促で請求することはできます。ですが、家賃滞納を理由として賃貸借契約を解除し、明渡請求をすることは支払督促手続きではできません。求めるべきものは、金銭であることが必要だからです。明渡請求を訴訟上でする場合には、通常訴訟で行うことが必要です。
- 相手の住んでいる管轄の簡易裁判所に申し立てる必要がある
裁判をする場合には、どこに申し立てるか?というルールがあります。原則は相手方(=被告)の住所地を管轄する裁判所です。例外はいくつかありますが、たとえば義務履行地を管轄する裁判所にも申立をすることは可能です。「貸したお金を返せ」という裁判を申し立てる場合には、義務履行地は債権者(お金を貸した人)の住所地とすることができます。相手方が近所にいるような場合には、特に不便ではないのですが、たとえば大阪にいる債権者が東京にいつ債務者に対して支払督促を申し立てる場合には、東京の簡易裁判所に申立をする必要があります。また、支払督促のみならば、書面審査だけで手続きは終了しますので、東京の裁判所に郵送で支払督促申立書を送付するだけでよいのですが、相手方が異議を申し立てて通常訴訟に移行した場合には、支払督促の申立をした人が東京の裁判所にわざわざ行く必要があり、距離的な負担を強いられることがあります。
- 相手方が異議を申し立てた場合、通常訴訟へ移行する
支払督促のメリットは、書面審査のみで手続きが終わることです。裁判手続きの一つとはいえ、通常の裁判に比べると、いわゆる口頭弁論期日が開かれない点においては略式の手続きといえます。そのため、支払督促を申し立てられた相手方は、『支払督促の内容に異議があるので、通常の裁判で行いたい』ということができます。
※ 2.で記載したように、この場合は相手方の住所地を管轄する裁判所で審理が行われるデメリットに加え、書類だけで手続きが完了するとは限らない点に注意が必要です
- 相手方が裁判所からの書類を受け取れる状態にあること
裁判所から支払督促を相手方に送ることを送達といいます。郵便局の配達員が支払督促の書類も配達しますが、郵便ではなく送達と呼ばれる手続きなのです。通常の裁判の場合には、相手方の所在が不明であっても、公示送達といって相手が訴状を受け取ったことにしてしまう手続きもあるのですが、支払督促の場合には送達できることが要件になりますので、相手の所在が不明の場合には支払督促手続きは利用できません。
- 仮執行宣言付支払督促が確定しても、既判力がない
既判力とは、既に確定した裁判で争われ判断されたことについては後に覆すことができないことです。日本の場合、裁判は三審制であり、第一審で出された判決についても、第二審で争うことはできますし、さらに第三審で争うこともできます。第一審を地方裁判所に申し立てた場合には、第二審は高等裁判所、第三審は最高裁判所となります。このように三審制をすべて利用した場合には、最高裁判所の判断で確定した判決となり、その判決に既判力が生じます。もちろん、第一審で原告・被告ともに控訴(=第二審へ再度審理を申し立てること)しなければ、第一審で出された判決が確定し、その判決に既判力が生じます。支払督促は、簡易裁判所の書記官によって出されるもので、通常裁判と比べて略式の手続きであるため、このような既判力がありません。そのために、後に支払督促の内容を争われて、覆される可能性もあります。
支払督促の流れ
支払督促の申立
相手方の住所地を管轄する簡易裁判所の書記官に対して、「債務者に支払督促を出すことを求める」との申請をします。
受理及び審査
裁判所が受理した申立書について、不備等がないかを審査します。
支払督促の送達
① 2週間以内に相手方から異議申し立てがなかった場合には、仮執行宣言付支払督促の申立を裁判所に行い、仮執行宣言付支払督促が改めて相手方に送達されます。
⇒ 異議申立がされると、通常訴訟に移行します
② 2週間以内に相手方から仮執行宣言付支払督促に対して、異議申し立てがなかった場合には、仮執行宣言付支払督促が確定します。
⇒ 異議申立がされると、通常訴訟に移行します
仮執行宣言付支払督促の確定
相手方から異議が出されない場合には、仮執行宣言付支払督促が確定し、裁判で勝ったということになります。つまりは、強制執行をするための債務名義となります。
ここまで進んでも、相手方が任意に支払をしない場合には、相手方の財産(不動産、動産、預金・給料など)に対して強制執行をすることが可能です(ただし、強制執行をするには債権者が何を差し押さえるべきかを探して、改めて裁判所に対して強制執行の申立をする必要があります)。
司法書士事務所尼崎リーガルオフィスからのアドバイス
支払督促は、メリットとデメリットが背中合わせであるといえます。
実際に支払督促を申し立てる際には、通常訴訟に移行することも充分に考えて行わないと、余計に手間が増えてしまうこともあります。逆に、相手方が同じ地域に住んでいる場合には、支払督促を利用するデメリットは少ないです。
また、相手方の性格、つまりは裁判所から通知が来たら払う可能性があるのか?を検討することも必要です。
いずれにしても、支払督促は金銭請求をしてそれを回収する、という目的と達成するための一つの手段です。具体的なケースによって、利用した方がよい場合とそうでない場合があります。
支払督促については司法書士事務所尼崎リーガルオフィスまでお気軽にお問い合わせください
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